2002年制作STUDIO六花作品/カラー9分・ステレオ/(C)YasuhiroYoshiura

【作品紹介と予告編】 / 【ストーリーと登場人物】 / 【脚本】

 「水のコトバ」を制作するにあたり、最初に書いた脚本を掲載しています。台詞が随所で相互につながり、繰り返し見ることによってじわじわと全体が見えてくるような、台詞芝居のようなタイプのアニメーションを目指しました。その一方で、観ていて途中で飽きるような、極端に実験的な作品にはしたくないという考えも常にありました。
 脚本を見る限りでは、キャラクターに動きが無く会話がだらだらと続いているだけですが、アニメーション本編ではいかにこれらの会話を飽きさせずにテンポよく見せるかに力を注ぎました。

※当然のことながら読むとネタバレするのでご注意下さい

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水のコトバ

● プロローグ
とある喫茶店。
さほど広く無い、細長い店内。
その狭さに似つかわしく無い、異様に高い天井。
店内全体がまるで水槽の内部のような雰囲気。
その高い空間の底に所狭しと並べられている丸テーブルと椅子。
壁には沢山の額入りポスター(その中に大きめの魚の絵のポスター)。
二人組ないしは一人の客がいる。
彼等はコーヒーの無くなったカップを前に、思い思いの時間を過ごしている。
ある二人組の女はせわしく友人や恋人の話を。
ある二人組の男は言葉数少なくけだるい時間を。
ある男は店内据え置きの冊子棚の前で黙々と読書を。
カメラはそれらの間を縫って、店内一番奥のカウンター席に辿り着く。
そこには一人の男性客が、背を丸めて不機嫌そうに座っている。
そのカウンターの向こう側で暇そうにしているウェイトレス。
そんな光景の店内で物語は始まる。

● どうしようも無い男とウェイトレス
カウンターに突っ伏した男(=ダメオトコ)
ウェイトレス(=ウェイトレス)
先日の彼女との喧嘩を思いし、ため息をつくダメオトコ。
それをウェイトレスが横目でちらりと見る。
なんとなしに二人の目が合い、あわてて目をそらすダメオトコ。
ウェイトレス「何か、彼女と別れて落ち込んでる人みたいな顔してるわね」
ダメオトコ「彼女と別れて落ち込んでんだよ。・・・分かるかなあこの気持ちがどういうものか・・・」
ウェイトレス「(被せてあっさりと)分からないわね。私、失恋には縁がないから
ダメオトコ、えっとなってウェイトレスを向く。
ウェイトレス「(しかたなく話に合わせる感じで)原因は?」
ダメオトコ「・・・些細なことから口喧嘩。『お前は口うるさい』『もっと相手を気遣え』・・・」
ウェイトレス「売り言葉に買い言葉」
ダメオトコ「言葉の綾なんだけどなあ」
ウェイトレス「ま、世の中広いんだし、そのうちいい人見つかるワヨ」
その後、そんな感じの話が続く。
そのままカメラはトラックバック。
カウンターの二人を間に挟む感じで、隣り合わせで座る二人組の女がフレームインしてくる。

● 忙しく話す女と女
やたら細かいことにこだわる細面の女(=クール)
口数の多い女(=オシャベリ)
既にかなり話し込んでいる雰囲気。
オシャベリ「・・・あ、でもー、そんな話といえばこんな話もあるわよ」
クール「どんな話?」
オシャベリ「あのね、友達の友達から聞いた話なんだけどー」
クール「(流暢にさえぎって)はいちょっと待って」
オシャベリ「え、何?」
図解画面に切り替わる。
クール「友達の友達ってことは面識の無い人ってことでしょ?面識の無い人から聞いたっていうのは変な話じゃない?」
オシャベリ「言葉尻捉えないでよー」
クール「そう?だって気になるし」
オシャベリ「あのね私は、友達の友達が友達に話したことを、その友達から聞いたの!」
クール「『また聞きした』わけね。で?」
オシャベリ「・・・でね、その子にも、好きな彼がいたんだって。『今まで会った人の中で、その彼こそ、一番相性が会う気がするワ』とか言ってるのよ」
クール「相性ね」
オシャベリ「そしたら、実はその彼・・・」
神妙な面持ちになり、顔を寄せあう二人。
オシャベリ「・・・男じゃ無かったんだって
クール「(おもいっきり疑わしそうに)・・・本当に?」。
オシャベリ「本当よ。ちょっと不可能よねー、付き合うの」
クール「不可能じゃないと思うけど」
オシャベリ「・・・あんた本当に言葉尻捉えるの好きねー」
クール「そう?だって気になるし」
等、話は続く。
カメラ、さっきとは別の位置からトラックバック。
向かい合わせで座る二人組の男がフレームインしてくる。

● 博学男とガタイ男
小柄な、帽子をかぶった男(=チビ)
ガタイのいい、帽子をかぶった(=デカ)
チビが一人で喋り、デカは見当違いな方向を眺めて時折興味無さそうに相づちを打っている。
特にすることも無く、無為に時間を過ごしている感じ。
チビ「・・・で、言葉そのものにも不思議な力があって、それを『言霊』っていうんだよ」
デカ「んー」
チビ「で、力の無い言葉はすぐに消えるけど、力の有る言葉は、喋った後も消えずに残るんだって」
デカ「あー」
チビ「で、そいつが言うには、今の世の中、余計な明かりが多いから、言霊が見えなくなってしまっているん・・・ねえ、聞いてる?」
デカ「(被せて)なあ・・・あれ」
と、壁の一角を顎でさすデカ。
チビ「どれ」
デカ「あの魚」
どうやら、壁にかかっている魚の絵のポスターを指しているらしい。
デカ「あれ、生きてるんだよな・・・」
間。
頭一杯に『?』が発生するチビ。
ちょっと乗り気になって体を起こすデカ。
デカ「よし!今度は俺の話を聞け!あれは三日前の事だ」

それまでの音がカットアウトして、ドラムベース系の音がカットイン。
合わせて、テロップ『3日前』。
同じ席で、一人で(コーヒーを)飲んでいるデカ。
デカの声「その日も俺はこの席に座ってたんだよ。そしたらさ」
何気なく例の壁の方を向くデカ。
魚が描かれているはずの絵の中に、魚がいない。
デカの声「絵の中の魚が消えてんだよ」
チビの声「(当然のように)何かの勘違いだろ。ほら、周りにこんだけ沢山の絵が飾ってあるんだ。別の絵と間違えたってことも・・・」
デカの声「確かにそれだけで済みゃあ、勘違いと思ったかもしれないがな。問題はその後・・・」
上を見たまま、少し視線を外すデカ。
そのまま固まり、手にもっていたカップを落とす。
店内の上方、その空中を優々と泳ぐ魚がそこに(見せるのは一瞬)。

音楽カットアウトし、元の音楽に戻る。
デカ「こう、その魚が・・泳いでたんだよ!
と、身ぶり手ぶりで話しているデカ。
カメラはそのままトラックバック。

● 読書の人
いったん、冊子棚がフレームイン。
その上部を接写。
店員の書き込み(CD屋さんとかにあるアレ)が貼り付けてある。
『活字を読もう!映画にも音楽にも無い、コトバの魅力がココにある!』
そのままパンダウン、本がジャンル別に置かれている。
『学術書』『ミステリー』『歴史モノ』『SF』『その他』
SFの所だけ、本が無い。
カメラはトラックバックし、寡黙に本を読む男・・・か女かよう分からん人(=ホン)がフレームイン。
傍らにSF小説を積み上げている。
読んでいる本の内容がテロップになる。
『ロボット工学の三原則・第一条。ロボットは人間に危害を加えてはならない。また何も手を下さずに人間が危害を受けるのを黙視してはならない。アイザック=アシモフ著「われはロボット」より』
このパートのラストに、クールとオシャベリの言葉が被る

● 話は中盤へ
再び女二人組。
オシャベリ「でもさあ、さっきの、友達の友達から聞いた話とかもそうだけど」
クール「又聞きした話」
オシャベリ「『一番相性が会うような気がする』とか思い込んじゃう相手に限って、実は何か欠点があったりするのよね」
クール「本当に相性が良かったら、欠点の一つや二つ気にしないわよ」
オシャベリ「そうじゃなくて、致命的な欠点!」
クール「例えば?」
二人、目をあわせてアイコンタクトをする。
そしてタイミングを計って二人同時に。
オシャベリ・クール「実は男じゃ無かったとか(クールは?調で)」
クール「ね、それ、本当の話?」
オシャベリ「(テーブルを叩くタイミングに合わせて)本・当・よ!」

オシャベリの声はダメオトコの座るカウンター席まで響いている。
ダメオトコ「やっぱ女はうるさい」
ウェイトレス「『女は』『女は』・・・若造がナマイキ言うんじゃ無いの」
ダメオトコ「(悔し紛れのつぶやき)若造はお互い様だろ」
ウェイトレス「あーら。私、見かけ程若く無いの
ダメオトコ「(ちょっと驚いて)え?」
ウェイトレス「何よ」
ダメオトコ「女が自分で言うか?そんなこと」
ウェイトレス「(ダメ男の『女は』発言にあきれて、もはや注意すらしない)そんなことってどんなこと?」
ダメオトコ「(戸惑う)え?いや、だから、『見かけほど若く無い』とか。そういえば『失恋には縁が無い』とも言ってたな。あれも変だ」
オシャベリ「あのー」
ウェイトレス「しょうがないでしょ。本当のことなんだから
いつの間にかオシャベリが背後に立っている。
オシャベリ「あのお、おかわり」

手馴れた手つきでコーヒーメーカーをセットするウェイトレス。
ダメオトコは反対側を向いている。
ここでオシャベリはウェイトレスの背中を、ダメオトコは向こうにいるチビとデカ見ることになる。
しばらくの間。
ダメオトコ&オシャベリ「・・・あ」
同時に別々の事に気がつき、同時に声をあげる二人。

ダメオトコは、言い争っているチビとデカに見入っている。
デカ「(チビの横に来る)あの魚の絵だよ。立てよ。な、見に行こうぜ、魚!」
チビ「・・・」
デカ「近くで見たら分かるかもしれないだろ!な?」
それにならって魚のオブジェを見上げるダメオトコ。
ダメオトコ「魚?・・・ああ」
ふと、その近くで蛍光灯らしきものが明滅し、壁に据え付けられたドアが見える。
そのドアには魚マークが描かれている。
ダメオトコ「ん?・・・ドア・・・」

ウェイトレス「はいどうぞ」
しかしオシャベリは放心状態、つっ立ったまま。
ウェイトレス「(肩をすくめて自分を指し)そんなに珍しい?」
オシャベリは我にかえり、慌ててカップを持つと、クールのいる席へ急ぎ足で戻る。。
ダメオトコはなんとなしに、そのオシャベリを目で追う。
席に戻ったオシャベリはクールとなにやら話し始める。
こちらの話をしているらしく、話しながら時折こちらをチラチラ見ている。
オシャベリ「ね!あそこの人・・・
クール「・・・ウッソー!
露骨に嫌な顔をしてウェイトレスの方に向き直るダメオトコ。
ダメオトコ「ほら、うるさい」
ウェイトレス「いや、彼女らは多分、私の話をしているんだと思うけど」
ダメオトコ「若造に気をつかってくれてるワケ?・・・!」
ウェイトレス「?」
そんなウェイトレスの顔に見入るダメオトコ。
思わず赤面して顔をそらす。
ダメオトコ「(頭の中の声)『そのうちいい人見つかる』か・・・」
ちょっとダメオトコの雰囲気が変わり、改めて喋り出す感じで。
ダメオトコ「なあ、たとえ欠点があったとしても、相性が合えば、そんな欠点の一つや二つ気にならないんじゃないかな?」
ウェイトレス「そんな相手は、なかなか見つからないと思うけど」
ダメオトコ「そっかな?(以下ぼそぼそと)君とか、相性が合うんじゃないかなー」
ウェイトレス「・・・え?」
ダメオトコ「今まで会った人の中で、君が一番相性が合うような気がする」
見つめ合う間。
ウェイトレス「あんた・・・(色んな意味で)重症だわ

その瞬間の、各人物の様子がフラッシュバック。
クールとオシャベリ。
デカとチビ。
デカ「・・・(ドカッと座り、ぐてーっと体をテーブルの上に寝せる)はあ」
ホン。
さらに読んでいる本の内容。
ヴェルヌの『海底2万里』の一説。
主人公の学者が海底の風景に心あらわれるシーン(挿絵入れる)。
前回と同じ要領でテロップ。
『わたしたちは、まるで巨大な水族館のガラスを見るようにして、このクリスタル・ガラスに見入ったのである。ジュール・ヴェルヌ著「海底2万里」より』

<ロボット工学三原則を考える>

彼女の行動を分析してみる。

第一条:
ロボットは人間に危害を加えてはならない。
また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条:
ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。
ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条 :
ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。

つまり彼女は、危機的状況下に置かれた人間を確認するまで「喫茶店で接客をする」という命令を実行し続ける。ダメオトコの言動の「イタさ」が一定の値を超え、「(精神的)重症」と判断されるに及び、ウェイトレスは接客を放棄し、ダメオトコに対し救助行動を試みる。

● 再びダメオトコとウェイトレスの会話の続き
何と、まだ固まったままである。
ようやく我に返ったように口を開くダメオトコ。
ダメオトコ「・・・は?」
ウェイトレスの中の何らかのスイッチがシフトする(以後、エピローグに入るまでは口調が冷淡になる)。

突然後方を指差す。
ダメオトコ「うわ!」
ウェイトレス「あのイーゼル見える?」
指差されるままに、しかし躊躇しながら反対側を向くダメオトコ。
確かに店内入り口付近に、イーゼルをかたどった立て看板が置かれているのが見える。
ただし、向こう向きに置かれているので、こちらから見えるのは裏側。
ウェイトレス「あれ、見てきて」
ダメオトコ「(ウェイトレスに向きなおりつつ)え?」
ウェイトレスに対して何かを言おうとするが、言葉に遮られる。
ウェイトレス「お願い」
ウェイトレスの真剣な顔に何も言えなくなる。
ちょっとその顔に見入った後、ゆっくりと席を立つダメオトコ。
一歩二歩歩いてから、もう一度ウェイトレスを振り返る。
依然真剣な顔つきのウェイトレス。
諦めが付いたように、踵をかえし、もう振り返らずに歩き出すダメオトコ。
ダメオトコ「(歩きながら)何なんだよ」
歩く様を真横からカメラでフォロー。
次に、手前側にチビとデカが入り、今度はそちら側に焦点を合わせる。

● 再びチビとデカの会話
デカは主張し疲れてテーブルの上に体を投げ出している。
デカ「・・・本当なのに・・・」
チビは、しかたなさそうな顔をする。
しばしの間。
チビ「んなことあるわけないだろっ」
と言いつつ、魚ポスターの方を向く。
魚がいない。
そこに再びデカのつぶやきが。
デカ「本当なのになー・・・(デカは壁を見ていない)」
チビ「あー」

立て看板の前に立ち、描かれている内容を見るダメオトコ。
そこには魚をかたどったデザインのポスター。
書かれている文字はただ一言。
『水のコトバ』(タイトルで使ったやつをそのまま使用)
ダメオトコ「(イーゼルを見て)水のコトバ?」
その下には順路を指し示すような『↑』の記号。
すぐそこにある、つい立ての向こうに行けという指事に見える。
ついたての反対側は照明の位置関係で真っ暗。
すると
蛍光灯が点灯し、一つのドアが浮かび上がる。
半開きのままになっている魚マークのドア。
ドアの中に入る。

● 水のコトバ
ドアが閉まると同時に、全ての環境音がカットアウト。
間を置いて、奇妙な旋律の音楽カットイン。
唖然とするダメオトコ。
そこは、店内上部の通路の上。
それだけなら不思議は無い(そうか?)が、何と辺りは青一色。
まるで、突然水中に投げ出されたような光景。
自分の目を疑うダメオトコ。
通路下には店内の全景が広がっている。
カウンター。
ウェイトレス。
沢山の丸テーブル。
二人組の女。
二人組の男。
本を読む男。
全てが眼下に広がっている。
海底に沈んでしまったように見える店内。
時が止まってしまったような光景。
ダメオトコの顔に驚きの表情が浮かぶ。
絵の中にいるはずの魚が、真上からの可視光線を受けて、沢山の泡と共に上昇してくる。
その光景に、我を忘れて見入るダメオトコ。
泡のうちの一つが、ふいに弾ける(水中ではこのような現象は起こり得ないが)。
すると、突然声が響く。
『売り言葉に買い言葉』
『言葉の綾なんだけどなあ』
驚いた顔のダメオトコ。
引き続き他の泡がやってきて、次々に弾け始める。
それら一つ一つから、それぞれの声が響き始める。
『言葉尻捉えないでよー』
『・・・だから、言葉そのものにも不思議な力があって、それを『言霊』っていうんだよ』
『こう・・・その魚が・・・』
『実は男じゃ無かったとか』
『私、失恋には縁が無いから』
『あーら。私、見かけ程若く無いの』
『いや、彼女らは多分、私の話をしているんだと思うけど』
『だからそれは、ロボットじゃなくてアンドロイドっていうの』
『今の世の中、余計な明かりが多いから、言霊が見えなくなってしまっているんだって』
周りに言葉が溢れ始める。
水が喋っているような光景。
浮かんでは消え、消えては浮かぶ泡。
一つ一つが生まれる意義を持ち、それでいて他愛も無く消えていく。
その光景の中に佇むダメオトコ。
ダメオトコも声を出そうとする、が、声にならない。
変わりに一つの泡がダメオトコの口からもれる。
空間を上昇し始めるその泡。
カメラはそれを接写しつつ上へフォロー。
他の泡と混じって登り続けるが、周りの泡はじきに弾けて消える。
その時も、もちろん声が響く。

『力の有る言葉は、喋った後も消えずに残るんだって』

そのコトバ通り、ダメオトコの口からでた泡はなおも消えずに登り続ける。
どこまでも、どこまでも。

● エピローグ
イーゼルの照明が消える。
そこにやって来るダメオトコ。
看板の前に立ち店内を見回すが、誰もいない。
唯一ウェイトレスだけが、カウンターで片付けをしている。
ウェイトレス「さっきの話の続きでもする?」
ダメオトコの顔。
明らかにさっきまでとは違う顔つきのダメオトコ。
ダメオトコ「・・・いや、どうでもいい話だから
出口に向かって歩き出すダメオトコ。
その後ろ姿を見送るウェイトレス。
出口付近まで来た時、ふとウェイトレスを振り返るダメオトコ(二人の距離はけっこうある)。
ダメオトコ「なあ、どうして俺に見せてくれたんだ?・・・その(上を指差す)」
それに対し、当然のごとく、しっかりとした口調で答えるウェイトレス。
ウェイトレス「人間が危害を受けるのを黙視してはならない。私には人間を助ける義務があるってこと」
少し面食らった顔のダメオトコ。
ダメオトコ「何それ」
ウェイトレス「(当然のごとく)ロボット工学の三原則。助かったでしょ?精神面で」
と言いながら、棚にグラスをしまうために、くるっと後ろを向く。
彼女がロボットであることが明らかになる。
ウェイトレス「コトバ数足りなかった?
ダメオトコ「(心ここにあらず、といった感じで)いや・・・十分
狐につままれたような顔をして出口へ向き直り、歩き出すダメオトコ。
ウェイトレスは店員として、(高いところからではあるが)会釈をする。
ウェイトレス「ありがとうございましたー」

出口へ向かうダメオトコの足音。
カメラは、まるで上昇する泡をフォローするかのようにパンアップ。
その光景が青一色になる。
さらにそれは、泡の表面に映る景色となり、ふいに弾ける。

おわり


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(C) Yasuhiro Yoshiura - since 2000/04/03